■1時間で20万人づつ増えた『YouTuber』としての『嵐』
嵐のYouTubeチャンネルは、たったの5時間で200万人が登録した。(※2019年11月12日時点での登録者数は230万人。)11時から16時のたったの5時間で、元SMAPの『草なぎ剛(93万人)』、人気YouTuberの『ラファエル(140万人)』『メンタリストDaigo(171万人)』をぶっちぎってしまった。この勢いで、1日10万人づつ増加したとすると、1か月300万人、2か月もあれば、600万人増加で、日本人トップの『はじめしゃちょー』(822万人)を年内に追い抜き、日本人トップYouTuberとして君臨していてもおかしくないだろう。
■『嵐』の1000万人登録チャンネルのカウントダウン最大風速は?
2020年12月31日の活動休止をすでに発表している嵐。それにあわせて、嵐の2020年は活動休止までのカウントダウンに突入する。すると、嵐のチャンネル登録者数が日本人初の1000万人登録も夢ではなくなるだろう。まさに国民的アイドルだ。そうなると、さらに、嵐の一挙一投足に国民の視点が集まることだろう。すでに1本あたり500万回以上の再生を達成している。コンテンツを量産しなくても、確実に1本が大ヒットしている。このようなコンテンツがファンサービスとして歴史に残されるだけでなく、ビジネスとしても、ジャニーズ事務所、いや、日本の芸能産業にとっても、デジタル戦略の幕開け時代となるのではないだろうか?
■ジャニーズ事務所、変革の時代
近年のジャニーズ事務所の動向としては、2016年にはSMAPの解散劇。2018年にはTOKIO山口達也脱退と、タッキーこと滝沢秀明の引退。2019年7月ジャニー喜多川死去がある。今がまさに、ジャニーズ帝国も大転換期を迎えている。何よりも、テレビやラジオ、雑誌の天敵としての『インターネット』に写真すら掲載させないという徹底ぶりの姿勢が、2019年11月3日に大きく変革した。勢力を失いつつあるテレビから、ネットサービスに本格的に参入し始めたのではないだろうか。2020年を目前にして、テレビとネットのシフトがゆるやかに始まる。ジャニーズ事務所の変革期が、ちょうど、ネット参入の絶好のタイミングでやってきたといえる。
ジャニーズJr.の5グループが各曜日を担当するチャンネル「ジャニーズJr.チャンネル(77万人)」を、2018年1月に開設するなどその布石は着々と準備されていたのかもしれない。
■2020年、音楽、テレビ、バラエティが変わる年
日本のテレビ業界は、常にタレント事務所による寡占市場で成立し、タレントは番組出演で認知度を上げ、コマーシャル出演で事務所の売上を支えてきた。音楽産業そのものが雑誌産業と同じく、フィジカルな物理メディアの限界をライブ興行で支えてきた。おそらく、テレビ広告費をネット広告費が奪う年にもなる2019年を経て、番組編成表とリモコンチャンネルの中で構成されるつけっぱなしのテレビコンテンツと、いつでも自由に好きなだけ消費し、お好みのアルゴリズムで永遠にリコメンドさえるネットコンテンツとでは、コンテンツの文法も違う。
おじいちゃん、おばあちゃんから小さなお子様までを対象としたテレビは、すでに60代以上のメディアがコアゾーンであり、YouTubeなどは30代以下がコアゾーンのメディアとなっている。この差は非常に大きい。当たり障りのないコンテンツづくりと、若年層に刺さるコンテンツづくり。リモコンのチャンネルしかないテレビチャンネルと無限のチャンネルがあるYouTube。
オリラジの中田敦彦は『中田敦彦のYouTube大学(120万人以上)』でエクストリームの授業を展開し、チャンネル登録者すら非公開とした。キングコングの梶原は『カジサック(142万人)』は100万人到達しなければ芸能界引退と退路を断つ思いでYouTubeに参入。ヒロシですの『ヒロシちゃんねる(54万人)』では一人で黙々とキャンプ映像を流す。国民的アイドルであった元SMAPのメンバーの『草なぎ剛(93万人)』でも100万人の登録者を獲得できないのは、テレビとの文法の違いを物語る。
たとえ、『嵐』といえども、かつてのミュージックビデオやテレビの焼き直しのような一般動画では、30代以下の登録者たちを満足させられないだろう。YouTube時代の『バラエティ』は、むしろ個人のキャラクターが際立つコンテンツが必要となることだろう。
審美眼のすぐれたプロデューサーであったジャニー喜多川のジャニーズ帝国の作り方ではなく、人間嵐のメンバーのパーソナリティー感があふれる番組をファンは見たいはずだ。
テレビ番組はプロの組織や集団によるクリエイティブだ。広告主の満足のもと、視聴率を見ながら番組を作り視聴率を獲得していく仕組みだからだ。対して、YouTubeは個人の個のエンパワーメントによる表現手法の場である。YouTubeでの活動はこの『温度差』が鍵な気がする。テレビ的にやればやるほど面白くないので、作り手も思考や手法のチューニングが必要だ。
YouTubeの場合は、公開した時の初速で企画の成否が3分後にはわかり、明日にはその反省を踏まえたPDCAを高速回転できる。週刊でのテレビとのスピード感とは実に大きな違いがある。チーム嵐のデジタル戦略の企画がどう挑んでくるのかがとても楽しみだ。むしろ、テレビ局側を本気にさせるような展開に期待したい。
■『グローバル配信』という外洋を乗り切れ嵐!
嵐の楽曲は2019年までの、全シングル64曲と初のデジタルシングルとなる新曲「Turning Up」を合わせた全65曲をグローバル配信を開始している。ここで、海外アーティストのデジタル戦略に目を向けてみよう。米国の女性シンガー、ケイティ・ペリーのビジネスモデルを紹介しよう。twitterでは1.1億人フォロワーを集め、YouTubeのチャンネル登録者数は3550万人であり、楽曲『ROAR』のPVは29億回再生だ。すでに彼女の動画再は、地球の人口以上に再生されている。1本の動画で0.1円の広告単価としても、もはや物理的なCDやDVDを凌駕する広告売上となる。
さらに、「VEVO」というミュージックビデオ専門の動画配信サービスを紹介しよう。VEVOは前述のケイティペリーなどの動画を扱い、YouTubeからの広告の分配を受けるというビジネスで成功している。音楽ではなくミュージックビデオコンテンツの権利を専門に扱うのだ。かつては、MTVのCATVにPV(プロモーションビデオ)として無償で提供しつづけたところが、音楽動画単体で成立するところにまで成立している。
当然、ジャニーズ事務所に限らず、よしもとやAKB関連も同じビジネスモデルは可能であろう。ただ、日本だけでは市場が狭い。テレビではできない中国向けのアウトバウンドコンテンツなども中国の動画サイトと座組みすることで、VEVOでもリーチできない分野を開拓することができる。VEVOはアジアでは展開していないからだ。
中国はGoogleや欧米系のSNSを排除することによって、中国圏に特化した巨大な情報網を国家と共に築いてきた。中国13億人がスマホでネット化することによってマーケットも世界最大になっている。なかでも、中国版Twitterとよばれる『ウェイボー(微博)Weibo』は、中国圏を中心に7億人のユーザーを抱え、中国最大級のソーシャルメディアだ。
フォローされることによって大量の情報を提供できるメリットは大きい。ジャニーズ事務所も、近年は積極的に活用している。山Pこと山下智久が2018年6月、木村拓哉が2018年12月、そして今回の嵐が2019年11月が利用を開始した。
中国では、日本のアイドルの番組や映像が、日本以上に『違法』で流通しており、視聴する機会が多い。そして、日本のタレントでは嵐が中国アジアでも人気が高い。日本のテレビ番組での露出量もあるからだ。今ままでは単に『違法』でフリーライドで消費されていたタレントのコンテンツであったが、嵐にとっては、世界での音楽配信ではじめてマーケットとして意識することができた。さらに、2020年春には嵐の初で最後となる北京公演が計画されているから期待度は高まることだろう。
日本の市場だけでなく、世界へ目を向けたことによって、海外に向けての情報発信と共に正規の『ライツ(権利)』の管理という新たな側面のマネージメント業務も生まれてきている。2020年の賞味期限のある『嵐』でどれだけ、アウトバウンド市場が開拓できるか。ジャニーズ事務所は、本格的な『デジタル戦略』で世界を相手に戦わなければならない。
2019-11-12 07:30:00Z
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