バブル絶頂期の1988年、遠くパリから海を越え「オリエント急行」がやって来ます。日本のJR線を走り大人気を博すと、JR東日本は翌年、3両の豪華車両「夢空間」を新造。これは国内の鉄道史でも最上位の豪華車両でした。
きっかけはパリ発東京行き「オリエント急行」
1988(昭和63)年は、日本の寝台列車にとって大きな年でした。というのも、3月に寝台特急「北斗星」が運行開始したからです。青函トンネルを通り、上野と札幌を直結するこの列車には、シャワーが使えるA個室寝台「ロイヤル」や、事前予約制でフランス料理のフルコースを提供する食堂車「グランシャリオ」など、豪華な設備が取り入れられました。
それまで「ブルートレイン」と呼ばれていた寝台特急は、最高級のA寝台車でも大半が個室ではなく、カーテンで仕切られた2段ベッドの開放形寝台でした。食堂車も廃止が進んでいた頃で、連結されていたとしても「あらゆる顧客の需要に応えた」、つまり特徴がないメニューでした。
そのため「北斗星」は別次元の寝台列車として映りました。登場時には「スーパーデラックスブルートレイン」「走るホテル」として、「北斗星」が紹介されたほどです。
さらに同年9月、フランスのパリから香港まで、豪華列車「オリエント・エクスプレス'88」が大陸を走り抜けやって来ました。そして列車はなんと、香港から船で日本に運ばれ、JRの線路を走れるよう改装されたのち、東京駅に到着したのです。
この「オリエント急行」は、超高額なツアー列車として日本国内を走行しました。現在の「トランスイート四季島」「トワイライトエクスプレス瑞風」「ななつ星in九州」のようなクルーズトレインの先駆けです。
豪華寝台列車の大好評を受け、JR西日本は「北斗星」を上回る特A個室寝台「スイート」を備えた寝台特急「トワイライトエクスプレス」を計画します。一方、JR東日本は1989(平成元)年の横浜博覧会に向けて、「究極のデラックス車両」をコンセプトとした3両の客車を新造しました。展示会場「夢空間'89」にちなんで、豪華車両は「夢空間」と呼ばれます。
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