スイスのノバルティスは、巨大製薬企業(ビッグファーマ)の病弊の縮図だ。1回の注射が210万ドルもする世界で最も高額な薬を製造している。2018年初めにこの薬を開発した米エイベックシスを買収してから、時価総額は270億ドル増加した。これは、非道なぼったくりの実験なのか。それとも社会の健康を実現しながら価値を生み出す完璧な処方箋なのだろうか。
脊髄性筋萎縮症の治療薬ゾルゲンスマ。一回の注射で210万ドルかかる現在世界で最も高額な薬=AP
脊髄性筋萎縮症という希少な消耗性疾患の患者にとって計算は簡単だ。ぞっとするような闘病生活をして、多くの場合幼いうちに死ぬか、もしくは毎年3万ドル程度を支払うか――当事者にすれば、どちらを選ぶかは自明の理だ。
感情にとらわれることなく資金を提供する政府や保険会社にとっては、その費用は従来の治療法と比較して考える必要がある。ノバルティスは、10年間で500万ドルかかる米国の現行の治療法と、1回限りの注射費用を比較する。保険会社には分割払いの選択肢がある。
■買収はサンクコスト
投資家はまた違った計算をする。この遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の研究開発費用はサンクコスト(途中で事業を中止しても回収できない経費=埋没費用)だ。ノバルティスがエイベックシスを(その他の新薬候補も含めて)87億ドルで買収した時点で、その大半を前金で支払ったと考える。製造費は1回分で数十万ドルと高いが、規模の拡大と効率性の改善によって引き下げられるはずだ。希少疾患治療薬の場合、マーケティング費用はほとんど必要ない。すぐに患者や医師が飛びつくはずだから。
売上高の面では、希少疾患の治療薬の販売件数が大規模になることはそもそもありえない。ゾルゲンスマは昨年5月末に米規制当局から承認され、今では1四半期の患者数が最大で約100人だ。だが新しい市場に参入して、2歳未満の患者以外にも提供できるようになれば、その数は増えるだろう。
アナリストは今後数年間の売上高を15億ドルと見込む。英証券会社リベラムは、税引き後利益率をざっと50%と計算し、エイベックシスの買収費用は6年で回収できるとみている。そうなれば、今後同社が開発する新薬は無料という計算になる。ノバルティスは、細胞・遺伝子療法が5年以内に売上高の20%を占めると予想している。現在は約1%にすぎない。これらは錠剤に比べると、同様の薬を開発するのが難しい。希少疾患の治療薬は、健康にも企業にも利益をもたらす可能性がある。
(2020年1月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)
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