IATA（国際航空運送協会）は、中国から感染が拡大した新型コロナウイルス（COVID-19）による世界の航空会社全体の2020年損失額について、最大で1130億米ドル（約11兆6017億円）減少するとの予測を現地時間3月5日に発表した。旅客数は世界全体で19％減少すると予測している。2月20に発表した損失額は293億米ドルで、患者数が現在のペースを超えて増加した場合、損失額が大幅に増えると予測している。
◆世界中に影響の「広範囲拡散」と現状維持の「限定拡散」
3月2日時点での各国の患者数を基に算出し、発生した国別の患者数により2種類のシナリオを予測。世界中で拡散する「広範囲拡散」と、2日時点での拡散状況を維持する「限定拡散」の2種類で、広範囲拡散は患者数10人以上の26カ国、限定拡散は患者数100人以上の8カ国を中心に予測した。
減少幅は、2002年から2003年にかけて、中国を中心に流行したSARS（重症急性呼吸器症候群）を基準とした。SARSでは、有償旅客の輸送距離を示すRPK（有償旅客キロ）の落ち込みのピークは発生の1カ月から3カ月後で、流行前の水準に戻るまでに6カ月から7カ月かかった。
◆「広範囲拡散」で19％減
広範囲拡散では、世界全体の旅客数が19％、旅客収入は1130億ドル、それぞれ減少すると予測。地域別で見ると、患者数10人以上の日本と豪州、中国、マレーシア、シンガポール、韓国、タイ、ベトナムのアジア太平洋地域8カ国では、旅客数が23％減、旅客収入は497億ドル、それぞれ減少するとしている。8カ国を除いたアジア太平洋地域全体では旅客数が9％、旅客収入が76億ドル、それぞれ減少すると予測している。
欧州では、オーストリアとフランス、イタリア、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スペイン、スイス、スウェーデン、英国の10カ国で、10人以上の患者が発生。10カ国の合計は、旅客数が24％、旅客収入が373億ドル、それぞれ減少するとしている。10カ国を除いた欧州全体では旅客数が9％、旅客収入が66億ドル、それぞれ減少すると予測している。
中東では、バーレーンとイラク、イラン、クウェート、レバノン、アラブ首長国連邦の6カ国で10人以上の患者が発生。6カ国の合計では、旅客数が23％、旅客収入が49億ドル減少するとしている。6カ国を除いた中東全体では、旅客数が9％、旅客収入が23億ドル、それぞれ減少すると予測している。
北米はカナダと米国の2カ国で、旅客数は10％減。旅客収入は211億ドル減少すると予測している。
◆「限定拡散」で11％減
限定拡散では、世界全体の旅客数が11％、旅客収入は630億ドル、それぞれ減少すると予測。3月2日時点で患者数が100人以上発生しているのは日本のほか、中国とシンガポール、韓国、フランス、イタリア、ドイツ、イランの計8カ国となっている。
日本は旅客数が12％、旅客収入が53億ドル減少。発生源となった中国は旅客数が23％、旅客収入は222億ドル減少すると予測している。シンガポールの旅客数は10％、旅客収入は13億ドル、それぞれ減少し、韓国は旅客数が14％、旅客収入が28億ドル減少するとしている。日中韓とシンガポールの4カ国を除くアジア太平洋全体では、旅客数は11％減、旅客収入は154億ドル減と予測する。
欧州では、イタリアの旅客数は24％減、旅客数は50億ドル減。ドイツの旅客数は10％減、旅客収入は29億ドル減、フランスの旅客数は10％減、旅客収入は25億ドルの減少を予測する。独仏伊の3カ国を除く欧州全体では、旅客数が7％減、旅客収入が92億ドル減少すると予測している。
中東では、イランの旅客数が16％減、旅客収入が6億ドル減少すると予測。イランを除く中東全体では、旅客数が7％減、旅客収入が30億ドル減少すると予測する。
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March 09, 2020 at 01:19PM
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