総合司会の加藤浩次、サブ司会に岩田絵里奈アナ、森圭介アナの体制から1年を経た『スッキリ』(日本テレビ系)。大喜利形式で押す異色の『ラヴィット!』(TBS系)も加わり、各局朝の情報番組が激戦を繰り広げる中、『スッキリ』の音楽コーナーは相変わらず充実。Nizi ProjectやTHE FIRSTといったデビュー前の若い男女の泣き笑いもあれば、世界的アーティストのレア出演、日本の最旬バンドの生ライブなど、異質とも言える朝から豪華な演出が見られる。同番組の音楽コーナーはなぜ、他の音楽番組を差し置いて独走状態なのか?
【写真】『スッキリ』ファミリーの水卜麻美アナ、ピチTシャツでわんわんポーズ
■情報番組では異例、海外豪華アーティストもこぞって出演「あの人が出ているなら出るよ感」が成熟
同番組の音楽コーナーは大きく分けて2つ。火曜日のウエンツ瑛士が担当する「WEニュース」は、海外アーティストのインタビューや生ライブを中心に構成。木曜日の「SHOWCASE」コーナーはマンスリーMCが立てられ、日本のアーティストが登場する。2020年からスタートしている「BUZZ-P」でも、テレビやSNS、動画サイト等でバズっている、これからバズりそうなアーティストを紹介しており、ボカロや歌い手などがピックアップされることも。
この基本形以外でも、コーナーに関係なく国内外の話題のアーティストが出演することも珍しくなく、特に海外アーティストが注目される。これまでも、エド・シーラン、ケイティ・ペリー、ジャスティン・ビーバー、テイラー・スウィフト、レディー・ガガといった現在のトップ・オブ・トップアーティストから、U2、スティング、スティーブン・タイラー、ライオネル・リッチーなどレジェンド級アーティストまで、そのメンツは超豪華だ。
K-POPアーティストのヒットにより、今では日本の番組に海外アーティストが出演することも珍しくはなくなったが、それまでは海外の大物アーティストが出演するのは純然たる音楽番組が通例。『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)や、t.A.T.u.のドタキャン騒動で話題になった『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)などが思い浮かぶ。
そんな中、同番組はコロナ禍でも大物から最旬のアーティストなどジャンル問わず、リモートでの生出演や同番組だけの特別なパフォーマンス披露など、本格的な音楽番組にも引けを取らない構成が見られる。
■新人から大御所まで…国内アーティストも幅広いラインナップ
一方、日本のアーティストも豪華かつ『スッキリ』ならではの“色”を出している。ヒットチャート・ダウンロード数上位のアーティスト以外にも、TikTok発やボカロなどの“最先端”アーティストから、いかにも青春っぽいバンドまでジャンルにとらわれず出演。さらに、八代亜紀がビリー・アイリッシュの「bad guy」を熊本弁でカバーすれば、和田アキ子がTikTokで女子高生に大人気の「YONA YONA DANCE」を披露など、大御所までが尖ったパフォーマンスを魅せてくれる。
また、水卜麻美アナとハリセンボン・近藤春菜が同番組を卒業する際は、加藤の計らいでスペシャルライブを敢行。東京スカパラダイスオーケストラ、田島貴男、宮本浩次、森山直太朗らが出演し、2人の門出を祝った。そういえば、コロナ禍真っ最中の2020年7月の「スッキリ バンドやろうぜ!!」では、加藤浩次(ギター)、近藤春菜(ドラム)、小澤征悦(ボーカル)、水卜麻美(ベース)といった楽器初心者4人が2ヵ月間、エレファントカシマシの「悲しみの果て」を練習する企画もあった。さらに曜日コメンテーターを含む、ボーカルオーディションも開催。1回限りのリモートセッションでは、本家・宮本浩次も見守り「練習風景からずっと真摯でキュートだった」と労う場面も。
一見、身内ネタのような企画でも、常に“音楽”を取り込んできた同番組だからこそ、違和感もなく、視聴者も温かく見守ることができ、ミュージシャン側も「『スッキリ』だったら出ますよ」というマインドになるのかもしれない。
■Nizi ProにTHE FIRST…『スッキリ』音楽コーナーがあるから派生したオーディション企画も話題
そして、ここ数年『スッキリ』で注目されるのがオーディション企画だ。Nizi Project(2020年)やTHE FIRST(2021年)は大いに話題となり、今後もYOSHIKIプロデュースによるオーディション番組の始動が発表されている。
オーディション参加者たちが一喜一憂する姿も印象的で、それがまたスタジオで見守る出演者や視聴者を感情移入させる。NiziUやBE:FIRSTとしてデビューした彼女・彼らは、デビュー後の動向も番組で取り上げられ、リリースがあれば出演し(リモート含め)、アーティスト側も加藤らとのやりとりを喜んでいる。
また、2019年9月に「WEニュース」からはじまったマンスリーMCにも注目したい。2022年4月期には、『おかあさんといっしょ』(NHK Eテレ)で第21代うたのおねえさんを務めた小野あつこが、民放デビュー作として「SHOWCASE」のマンスリーMCに就任。4月28日の放送では、なにわ男子のメンバーを「おかあさんといっしょ」当時のノリ全開で、手遊び「パンダうさぎコアラ」で招き入れる…という一幕があり、“奇跡のコラボ”としてSNSを騒がせた。
■朝の情報番組にも関わらず専門番組をも凌駕する“音楽ファースト”の姿勢
他にも、川谷絵音、清塚信也、BiSHといった、なかなかバラエティ等では見られないミュージシャンがMCを務め、同番組の“音楽ファースト”の姿勢が見て取れる。その一方で、4月のあつこおねえさんをはじめ、ウルフ・アロン(柔道)やもう中学生(お笑い)など、MC起用へのチャレンジングも。ミュージシャンあるいは他ジャンルの面々の“バラエティ進出”という、よいきっかけ作りにもなっているように見える。
かつて、ミュージシャンは“テレビ番組には出演しない”ことが一種のステータスだった時代もあった。しかし時代が下るにつれ、音楽番組のみならずバラエティ番組に出るのも普通となり、さらには『スッキリ』の進めてきた“音楽ファースト”の姿勢が認知されると、洋邦を問わず「朝の情報番組」『スッキリ』に出演すること自体が、今や“箔”のつく一つのステータスとなっているようだ。
アメリカの『グッドモーニング・アメリカ』のように、朝の番組にビッグアーティストが出演することは特別なことではない。その流れもあり、過去には他局でも、国内外のアーティスト出演はあった。とはいえ、新曲のリリースタイミングが多く、『スッキリ』のように“音楽”が番組の1つの大きなコンテンツとして盛り込まれていることは少なかった。
数々の音楽番組がありながら、朝の情報番組が“音楽コンテンツ”を担っているのも皮肉なものではあるが、リピーター出演が続き「スッキリ」ブランドがアーティストたちの間で定着しはじめているのは事実であり、ミュージシャン側・制作側の「ウィンウィン」関係を生み出しているのは間違いない。
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